(写真:Koarakko/イメージマート)(写真:Koarakko/イメージマート)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 先週、吉野家の前を通りかかると、「秋の牛丼祭り」100円引きのポスターを見た。

 最近は牛丼を控えていたのだが、100円引きにつられて、久しぶりだからいいか、と食べた。相変わらず、うまい。

 普通だったら牛丼は498円(本稿の価格はすべて税込み)の価格が、398円である。みそ汁を追加しても500円でおつりがくる。

 最近、牛丼を控えていたのは、その塩分量が気になっていたからである。牛丼は並で2.5g、みそ汁をつけると1.3g、合計3.8gの塩分になる。

 以前、この欄でもすこしふれたが、わたしは塩分摂取量を気にしている。

 採血検査でクレアチニン(CRE)値が出る。正常値は0.61~1.08とされている。これが高いと腎機能に影響が出、危険値を超えると人工透析になるという。

 わたしの場合、この値が2020年にいきなり1.23となり、はじめて検査結果報告表に要注意の赤棒が立ったのである。その後、1.33になり、去年9月には1.45、今年の9月に1.49になった。

 医者からこの後も上がりつづけるようなら、抑えるための薬も考えましょう、といわれた。それ以来、その言葉が気になっているのである。

「男性7.5g未満、女性6.5g未満」というが…

 日本人の現状の塩分摂取量は、男は10.9g、女は9.3gを摂っているとされる。ちなみにWHOによると、フランス9.6g、アメリカ9.1g、ドイツ9.0g、オランダ8.4gである。西洋人は意外と薄味なんだ。

 日本人は昔から塩分のきつい漬物をおかずにしてご飯を食べてきた、という歴史がある。とくに東北地方はそれが顕著だった。

 信州でも高齢者が短命といわれ、その原因は、塩分の多いみそ汁の飲みすぎだとされた。諏訪の病院に赴任した鎌田實医師が、具沢山のみそ汁を推奨する減塩運動を行い、それが普及すると、高齢者の健康は大幅に改善したといわれる。

 厚労省の基準では、一日の塩分の目標とすべき摂取量は男性で7.5g未満、女性は6.5g未満とされている。

 しかし、わたしはむくみとか尿量低下とか夜間頻尿とかの自覚症状は全然ないのである。数値が2.0とか3.0にならないと症状が出ないといわれる。出たときには治療をしなくてはいけない段階だということである。