しかし、バイデン米政権は1年後の23年10月に規制強化を発表。中国などに対する米国製先端半導体・装置の輸出規制対象を広げた。これにより、A800とH800も輸出できなくなった。

 この「いたちごっこ」のような状況は、ジーナ・レモンド米商務長官によって非難されたが、依然として続いている。エヌビディアはその後、米政府が新たに定めた性能基準を下回る3種のGPUを開発した。3種とは「HGX H20」「L20 PCIe」「L2 PCIe」である。これらのGPUは、AI向け最新機能の多くを搭載しているが、新規制に準拠するため、一部のコンピューティング能力が抑えられている。

 エヌビディアは24年3月に開いた開発者会議で、次世代GPUシリーズ「Blackwell(ブラックウェル)」を発表した。そのうちの「B200」は、チャットボットのようなタスクにおいて、前モデルに比べて30倍の高速性を実現する。

 ロイター通信によると、エヌビディアはB200の中国向け製品「B20」の市場投入準備も進めている。中国販売パートナーの1社である浪潮集団(Inspur Group)と協力している。このB20の出荷は25年4〜6月期に始まるとみられている。

 SCMPによると、エヌビディア製HGX H20への需要は当初低迷していたが、ここ数カ月で着実に伸びている。中国のクラウドサービスプロバイダーにとってエヌビディア製品にはメリットがあるという。エヌビディアから正規の技術サポートや保守サービスが受けられるからだ。

ファーウェイの顧客、AI開発で問題に直面

 これに対し、ファーウェイの顧客企業は、同社製半導体を使用したAI開発において様々な問題に直面していると報じられている。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、Ascendを使用する企業から、ソフトウエアのバグや、エヌビディア製品からの切り替えの難しさといった不満が相次いでいる。その理由として、①チップの安定性の問題、②チップ間の通信速度の遅さ、③ファーウェイ独自のソフトウエア「CANN(Compute Architecture for Neural Networks)」の性能不足、などが挙げられている。

 ただ、ファーウェイ製AI半導体に対する需要は依然として強い。同社は24年8月29日、同年1〜6月期の売上高が前年同期比34%増の4175億元(約8兆5500億円)だったと発表した。当時の輪番会長、徐直軍氏はこのときの声明で「私たちの全体的な業績は、予想通り好調だった。今後も、すべてのビジネスプロセスで高品質を推進し、ポートフォリオを最適化してビジネスのレジリエンス(強じん性)を高め、活気あるエコシステム(経済圏)を構築する」と自信を示した。