「建物公開2024 あかり、ともるとき」展示風景 撮影/JBpress編集部

(ライター、構成作家:川岸 徹)

現在は東京都庭園美術館本館として活用されている旧朝香宮邸の建築としての魅力を堪能してもらうため、年に一度開催している建物公開展。9月14日に開幕した「建物公開2024 あかり、ともるとき」では、建物の見どころの一つである「照明」に焦点を当てる。

アール・デコに魅せられた朝香宮夫妻の自邸

 久邇宮朝彦親王の第8王子鳩彦王が1906(明治39)年に創立した宮家・朝香宮家。鳩彦王は1922(大正11)年から軍事研究を目的にフランスに留学したが、現地で交通事故に遭い、看護のために渡欧した允子内親王とともに1925(大正14)年までフランスに長期滞在することになった。

 当時のフランスはアール・デコの全盛期。その様式美に魅せられた鳩彦王は帰国後、白金台にアール・デコの精華を取り入れた邸宅建築を構想。フランスの装飾芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計や室内装飾を依頼した。また建築を担当した宮内省内匠寮の技師・権藤要吉も西洋の近代建築に対応。こうして1933(昭和8)年、アール・デコの様式美と日本特有の高度な職人技が融合した邸宅「朝香宮邸」が完成した。

 1947(昭和22)年、朝香宮家が皇籍離脱により朝香宮邸から退去すると、吉田茂が外務大臣公邸として使用。その後1981年に東京都の所有となり、2年後に旧朝香宮邸の建物をそのまま活用した「東京都庭園美術館」が開館。2015年には宮内省内匠寮による邸宅建築の価値の高さが評価され、国の重要文化財に指定されている。

 東京都庭園美術館では建築物としての魅力を堪能してもらう機会として、年に1回、建物公開展を開催。毎回異なるテーマを設定し、様々な角度から建物の特徴や秘めたエピソードなどを紹介している。2024年のテーマは“照明”。「建物公開2024 あかり、ともるとき」と題し、各室の照明器具はもちろん、室内装飾やアール・デコ様式の意匠を通して旧朝香宮邸の魅力を探っていく。