景気悪化やデフレへの懸念

 ひょっとしたら、人民銀が本当に心配しているのは、そしてその心配を十分に正当化する懸念とは、陰鬱で自己成就的にもなり得るシグナルが債券利回りの低下から発せられていることかもしれない。

 債券利回りの低下は、政府の経済政策に対する不信任投票に等しい意味を持ち、景気は改善しないという予想や、手をこまねいていればデフレが根付いてしまうという警告になる。

 大手金融機関モルガン・スタンレー所属のエコノミストらによれば、1990年代の日本はそのような状況に陥った後、企業が賃金上昇を抑制することによって物価の安い環境に対応しようとした。

 これこそデフレ・スパイラルが定着しうるパターンだ。

 人民銀はこの根本的な問題を認識しており、直近の政策報告書では「不十分な有効需要(内需)」に言及している。

 しかし、為替レートを安定させる必要もあることから、人民銀は大したことができずにいる。

 7月には小幅な利下げを1度行った。米連邦準備理事会(FRB)が金融を緩和し、中国との金利差を縮小させる時期になれば、人民銀は政策金利をもっと下げられるかもしれない。

 人民銀はまた、債券市場により積極的に介入する道具を手に入れつつある。それ自体は理にかなっており、何の問題もない。

 だが、債券利回りを押し下げているマクロ経済の潮流を押しとどめるには至らないだろう。