一定レベルの金利上昇でも返済に問題がないか確認しておきたい
次に、これから変動型の住宅ローンの利用を考えている人は、借り入れ時の金利が上昇する可能性があるので、その場合には返済額がどうなるのか、それでも家計などに問題がないかなどを確認しておく必要がある。
【図表5】は、借入額5000万円、元利均等・ボーナス返済なしの条件で金利が0.375%から上がった場合の返済額を0.2%刻みで試算している。
0.375%だと毎月12万7049円だが、0.575%になると13万1456円になって、3.5%の増額だ。この程度ならそんなに大きな影響はないかもしれないが、1.0ポイント上がって1.375%になると15万0049円になり、18.1%の増額。返済額が2割近く増えてしまう。
家計の安全性を重視して、返済負担率(年収に占める年間の返済額の割合)を25%とした場合、毎月12万7049円の返済額だと610万円の年収があれば大丈夫だが、15万0049円だと720万円の年収が必要になる。年収によってはマイホーム購入が難しくなるケースが出てくるかもしれない。
その際注意しておかなければならないのは、住宅ローンの金利はローンの申し込み時点の金利ではなく、購入物件の引き渡しを受けて、融資が実行される期日の金利が適用されるという点だ。
中古住宅や完成済みの物件だと、契約後さほどの時間をおかずに引き渡しを受けることができるので、現在の金利で利用できる可能性が高いが、大規模な新築マンションだと完成・引き渡しが1年、2年も先になることがある。そうなると、金利が上がっている可能性が極めて高くなる。
それだけに、一定レベルの金利上昇でも返済に問題がないか、現在より高めの金利でも試算して確認しておくのが安心だ。できれば、1%から2%高い金利で試算して、家計管理に問題がないかどうかをチェックしておきたい。
いずれにしても、変動型住宅ローンの利用に当たっては、金利動向をリアルタイムに把握して、臨機応変に対応できるようにしておくことがこれまで以上に大切になってきそうだ。
【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。