JBpressで掲載した人気記事から、もう一度読みたい記事を選びました。(初出:2024/4/5)※内容は掲載当時のものです。
東大含む(いわゆる)旧帝大合格者のうち、東京圏出身者の割合が近年顕著に増えている――。本人が選択しえない「生まれ」による教育格差は、いまどんな状況にあるのか。出身地域の多様性が下がったキャンパスは、学生たちにどんな影響を与えるのか。『教育格差』(ちくま新書)の著書がある龍谷大学社会学部の松岡亮二・准教授が、3回にわたり詳しく解説する。
#3/全3回
<前編>東大合格、増える東京圏出身者 北大・東北大では地元合格を押し下げ…進む「地域格差」は社会に何をもたらすか
<中編>親非大卒枠、地方出身枠、女子枠…大学入試のアファーマティブ・アクション、拡充でも公平性達成は程遠いワケ
(松岡 亮二:龍谷大学社会学部 准教授)
都道府県間の高校教育制度の違い
戦後日本社会に育ったすべての世代について、保護者の職業、学歴、収入などで構成される出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status、以下SESと略)、出身地域、性別といった子ども本人が選んだわけではない初期条件(「生まれ」)によって、最終学歴に差がある(詳細は拙著『教育格差(ちくま新書)』(松岡2019)参照)。
なぜ、そのような傾向が日本社会に存在するのだろうか。
前編でデータを確認したように、地域別の4年制大学(4大)進学率は、すべての年度において東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)と2府2県(愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)のほうが非三大都市圏(その他の39道県)より高かった。
この地域格差の背景には、子どもに大学進学を期待する高SES層が三大都市圏に居住する傾向(松岡2019)や都道府県間の高校制度の違いを含む様々なメカニズムが考えられる1。
1 地域間の大学進学格差の研究動向やメカニズムについては下記文献などがある。
◆ 日下田岳史(2017)「大学進学機会の地域格差に関する仮説生成型研究」『大正大學研究紀要』102, pp.290-318.
◆ 朴澤泰男(2016)『高等教育機会の地域格差』東信堂.
◆ 朴澤泰男編著(2022)『18歳人口減少期の高等教育進学需要に関する研究』国立教育政策研究所 平成30~令和元年度プロジェクト研究報告書(研究代表者 濱中義隆).
◆ 松岡亮二(2019)『教育格差:階層・地域・学歴(ちくま新書)』筑摩書房.
◆ 中村高康・松岡亮二(編著)(2021)『現場で使える教育社会学:教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ書房.
◆ 田垣内義浩(2021)「高等教育機会の地域間格差に関する研究動向と展望」『東京大学大学院教育学研究科紀要』60, pp.383-392.
松岡 亮二(まつおか・りょうじ)
龍谷大学社会学部准教授。ハワイ州立大学マノア校教育学部博士課程教育政策学専攻修了。東北大学大学院COEフェロー、統計数理研究所特任研究員、早稲田大学助教・専任講師・准教授を経て、2022年度より現職。早稲田大学リサーチアワード「国際研究発信力」(2020年度)などを受賞。著書『教育格差(ちくま新書)』は、1年間に刊行された1500点以上の新書の中から中央公論新社主催「新書大賞2020」で3位に選出。2024年4月時点で16刷、電子版と合わせて6万8000部突破。