フォードの失言とレーガンの愛想のよさ
選挙の結果を左右した3度のディベートのうち、残る2度のディベートにはジミー・カーターが参加していた。
1976年の投票日の1カ月前、カーターは現職のジェラルド・フォードをワナにおびき寄せ、東欧はソビエト連邦の支配下にあるとの認識を否定させた。
そのため、激戦州に居住するポーランド系やチェコ系の有権者がフォードから離反してしまい、両候補が獲得する選挙人の差が縮小。
オハイオ州とウィスコンシン州に住むほんの数千の有権者が選挙全体の結果を左右する展開になった。
世論調査会社の創業者ジョージ・ギャラップはこれを「選挙活動で最も決定的な瞬間」だと評した。
俳優のチェビー・チェイスは人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演し、フォードのものまねでこの失言を取り上げた。
曰く「私はね、昨年ポーランドの首都を訪問したんですよ。それに、最初から言わせてください、ミルウォーキーは美しい街です」――。
1980年の選挙ではロナルド・レーガンが愛想のよさを発揮し、ソ連に対し警戒態勢を取りたがる狂信的な人物ではないかという疑念を鎮めた。
そのとき――実に投票日の1週間前だった――まで、両者はまさに互角の戦いを演じていた。
レーガンに必要だったのは、正気であるように見せることだけだった。最終的にレーガンは地滑り的な大勝利を収めた。
このように、2番目と3番目の事例はトランプにとって不吉だ。彼は大人数の集団を貶める能力にかけては誰にも負けない。
過去には女性、制服を着て仕事をしている人、そして薬物依存症や障碍に苦しむ家族がいる人々などを標的にしている。
面白おかしい人物かもしれないが、頼もしい人物でないことは明らかだ。