私立名門大学附属に行くなら大学からのほうが入りやすい

 先ほど西田さんも言及されましたが、わかりやすく世界ランクが下がっていて日本の大学の相対的な優位性がどんどん落ちているなか、いい中学に入るのが難しくなる一方で、リターンの大きい割合を占めているであろう国内難関大学への合格のしやすさという魅力は減っている。そういう意味で、コスパやタイパはどんどん悪くなっていますよね。

 これをあまり言いすぎると、ちょっと読者の人は不快感を持たれるかもしれませんが、どうしても大学の学歴で慶應がいい、早稲田がいい、というときに中学からそれらの附属に入るのはすごく大変です。特に女の子は、定員が少ないのでめちゃくちゃ難しいんです。

 ところが、「どうしても早稲田の政経がいい」とかではなくて、学部はどこでもいいのでとにかく早慶に入りたいという場合には、学部によって入りにくさ、入りやすさがあるものの、大学まで待てば、なんなら1年浪人するぐらいのことを許容すれば、ある程度受験勉強をこなせる子なら受かります。

 だから中学受験で、なぜそんなに無茶なコストのかけ方をするのかと言いたくなっちゃう(笑)。大学で慶應に行きたいだけだったら、高校時代に勉強を頑張るとか、浪人を1年すればいいじゃないですか。

 とはいえ、早稲田大学や慶應義塾大学に入るのは確かに簡単ではありません。

 でも、たとえば立教大学や青山学院大学などはどうでしょうか。もちろん、これらもいい学校ですよ。だけど立教や青学の附属中学はめっちゃ難しい。びっくりするぐらい難しくて、同じ立教かと思うぐらい別世界です。

 だけどおそらく、大学受験時の立教の偏差値的には慶応や早稲田に比べてかなり入りやすいですよね。実は、私立大学全体でみると、一般入試はすでに合格者数の半分以下なんですよ。推薦入試や、自分に合った分野の総合選抜入試を選べば、かなりの難関大でも入りやすい状況です。

 ですから、子どもを立教とか青山学院に入れたがっている親御さんには、高3の夏休みぐらいから本気を出す方法もあっていいんじゃないかとは言いたいですよね。

西田:まったく同意ですが、グローバルエリートの安田さんが言うと説得力がちがいます。もっと安田さんに言ってもらおう(笑)。ぼくも一握りの勝ち組をのぞいて、社会的にみれば中学受験は害悪の塊だと感じています。子どもに負担を強いる理由が親の地位財的な感情であれば罪深いですよね。うちの子どもたちも「やりたい」と言い出したので、中学受験組ですが……。

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