3.中途半端な攻勢で自滅に向かうロシア軍

(1)キーウ占拠を途中で諦めた

 ロシア軍は侵攻当初、ウクライナに全正面同時侵攻を行った。

 この時、ロシアからウクライナを占拠することが目的であれば、2つの案、

①全正面から攻撃するもののキーウを重点にしてその他の正面の戦力は減らして攻撃する案と

②すべての戦力を全正面から攻撃するという案があったかと思う。

 この時、ほかの作戦がうまくいかなかったとしても、①の案を採用すべきであった。

 ところが、ロシアは最も優先すべきであったキーウ占拠をあとわずかというところで攻撃続行を放棄して撤退してしまった。

 最も優先すべきであったキーウ占拠を途中で諦めたのだ。

 キーウ近郊の空港への空挺・ヘリボーン作戦の失敗、兵站上の問題や侵攻経路が水没で塞がれたという障害が発生したからだというが、途中で諦めてしまった。

 第1の目的を達成するためには、そこに全戦力を集中して、攻撃衝力(攻撃を継続する力)を維持し、あらゆる犠牲を払ってでも占拠すべきであったのだ。

 それを途中で諦めた。ロシアにとって、この作戦からの撤退がウクライナ侵攻の最大の失敗であった。

(2)ハルキウやヘルソンの北半分から早々の撤退

 ロシア軍は2022年4月頃、ウクライナ軍の強い抵抗を受けて、キーウ正面から撤退し、戦線をハルキウ州~ルハンスク州~ドネツク州~ザポリージャ州~ヘルソン州に縮小した。

 そうして、最小限の目標を達成しようとした。

 ところが、2022年6~9月頃、ウクライナ軍の反撃を受けて、ハルキウ州・ヘルソン州の一部から早々に撤退してしまったのだ。

 この地を防御できる戦力が足りず、準備もできていなかったというのも一理ある。

 しかし、戦線を縮小したのだから、火力と戦力を投入して、この地を死守するべきであった。

(3)ハルキウの戦線を拡大、ドネツク北部の突破促進を無駄にした

 アウディウカ方面からの攻勢は、うまくいけばドネツク州の境界まで突進していく計画であった。

 しかし、今頃になって、ハルキウ正面の攻撃を開始した。つまり、アウディウカ攻勢も中途半端になった。

 近代戦の戦理から考えれば、突破が成功しそうであれば、攻勢側はあらゆる戦力を投入して、多くの犠牲を払ってでも突破し、その拡大を図り、ウクライナの防御線を突き破るべきであったのだ。

 だが、ロシア軍は使用できる残りの全戦力をドネツク正面に投入せずに、ハルキウに投入してしまった。

 勝敗の境目であった戦局で、そこに防御を突き破る戦力を投入しなかったのだ。

 結局、ここでもロシア軍は中途半端な攻撃をしてしまった。