3.ミサイルを撃ち合う戦争の教訓

 ロシアのミサイル攻撃とウクライナミサイル防衛、および最近生起したイランとイスラエルのミサイル攻防を見ていると、撃墜することが難しい弾道ミサイルや極超音速巡航ミサイルと、撃墜が比較的容易な巡航ミサイルや自爆型無人機の2つに分けられる。

 撃墜が難しいミサイルには、パトリオットミサイルPAC-3のように、特別なミサイルが必要である。

 この防空ミサイルを打ち尽くしてしまい、その後迅速に供給されない場合には、弾道ミサイルでエネルギー施設や軍事施設が狙われて、何もできずに破壊されてしまうだろう。

 今年になってからのロシアの弾道ミサイル等攻撃とウクライナのミサイル防衛の実態がまさにこれに当たる。

 ここで、2年間のウクライナ戦争でのミサイルの攻防およびイランとイスラエルのミサイル攻撃の特色について、分析する。

(1)イランは、ロシアのミサイル攻撃要領を真似る

 イランによる1日約300発のミサイルや無人機攻撃は、ロシアの飽和攻撃、各種ミサイルと自爆型無人機を複合させた攻撃を真似たものだ。

 ミサイル開発を行っている国々、特に独裁国家は、どのようにすれば敵国に大きなダメージを与えられるのか、ロシアから学んでいる。

 それらの国々の命運を分ける戦争でのミサイル攻撃なので当然のことだ。また、イランは自爆型無人機を供給するなどロシアと軍事協力関係にある。

(2)弾道ミサイル等を撃墜可能な防空ミサイルがなくなれば、重要施設が守れない

 ロシアが極超音速巡航ミサイルをこれまで2発発射しているが1発も撃墜されていない。

 一方で、空・地上発射の弾道ミサイルは、これまで多くが撃墜されてきたが、今年になって撃墜が困難になってきた。

 現実には、3月22日には19発中1発も撃墜することができなかったこともあった。その理由は、ウクライナ軍が保有してきたパトリオットミサイルが不足してきたためだ。

(3)防空兵器を混乱させるため各種ミサイルと無人機を組み合わせる攻撃

 ロシアはまず第1弾として、多数の無人機で、その後数種類の長射程巡航ミサイルを囮として発射し、ウクライナ軍防空兵器を混乱させる。

 その混乱に乗じて、第2弾として空と地上発射の弾道ミサイル、極超音速巡航ミサイル攻撃を行う。

 ウクライナ軍はそのミサイル撃ち漏らし、結果的に重要施設などを破壊されている。

 その間、ウクライナの防空レーダーが作動しているので、対レーダーミサイルで攻撃し、その破壊も狙っている。