「バリカタン2024」始まる
4月22日(月)、米国とフィリピンの合同軍事演習「バリカタン2024」が始まった。この演習は、中国の野望を絶つ上で極めて重要な演習の一つである。
バリカタンは、タガログ語で「肩と肩を並べる」という協力を意味する言葉である。
フィリピン軍報道官は「演習は特定の国を意識したものではない」としつつも、明らかに中国を睨んだものであり、演習は5月20日までの約3週間にわたり行われる。
本演習は、米比両軍のほか、オーストラリア軍とフランス軍が初めて正式参加し、日本(自衛隊)をはじめ、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のマレーシアやベトナム、ブルネイなどを含む14か国がオブザーバー参加している。
中でも米軍は、陸軍、海軍・海兵隊および空軍から約1万1000人を動員し、バリカタン全参加人員は合わせて1万7000人を数える。
また、フィリピン軍の責任範囲を、領海を越えて排他的経済水域(EEZ)にまで拡大することを目的とした包括的群島沿岸防衛構想(Comprehensive Archipelagic Coastal Defense Concept)と呼ばれるフィリピンの新軍事戦略の下で行われている。
本演習は、冷戦時代の海軍間の小規模な演習から、規模と範囲の両面で飛躍的に拡大した多国間大規模演習へと発展している。
バリカタンは、中国から軍事的圧力を受け、南シナ海の発火点となる恐れがあるセカンド・トーマス礁やスカボロー礁を念頭に、また台湾有事も想定して、パラワン島の西海岸と南シナ海、そしてバシー・ルソン両海峡に近いルソン島などを舞台として、対艦作戦や対上陸作戦、島嶼奪還作戦、多国間海上作戦などの演習が行われる計画である。
本演習は、フィリピン軍がより先進的な米軍から多くの教訓を学ぶチャンスをもたらし防衛能力を強化するともに、米比相互の連携要領や相互運用性を高める狙いがある。
そこで、米比の防衛協力強化の現状や米国のインド太平洋軍事戦略に基づく作戦構想のうち、本演習で計画・適用されている訓練について概観することとする。