栄養バランスが大切

 脂質、タンパク質、糖質はATPの原材料ではありますが、それだけでなく、同時にビタミンやミネラルもなければアセチルCoAをつくれません。ですから脂質、タンパク質、糖質にビタミンとミネラルを加えたものを五大栄養素と呼ぶのです。

「飽食の時代」といわれて久しい現代では、食事の質はともかく、量は十分足りていることが多いでしょう。タンパク質はやや少ないものの、パンやごはんなど炭水化物の摂取量は十分だといえます。でもビタミンやミネラルは不足しがちではないでしょうか。

休養学: あなたを疲れから救う』(片野秀樹著、東洋経済新報社)

 ちなみに、三大栄養素の中で最も大切なのは、脳内の神経伝達物質の素となるタンパク質です。神経伝達物質といえばノルアドレナリン、ドーパミンなど興奮系の物質が有名ですね。ほかにも抑制系のGABA、調整系のセロトニンなどがあります。特に休養にはGABAが必要ですし、セロトニンには興奮をうまく調整して、しずめてくれるはたらきがあります。

 これらの神経伝達物質はタンパク質を材料としてつくられます。私たちが食事で摂取したタンパク質が体内で変化することによって、GABAやセロトニンなど休養に役立つ神経伝達物質ができます。したがってしっかり疲れをとるには、日頃から肉や魚などタンパク質をしっかりとらなければいけません。

 ただし、繰り返しになりますが、補酵素がないとアセチルCoAに変換されません。その先のATPができないと細胞の修復もされず、疲れがとれません。疲れをとるには、タンパク質と一緒にビタミンやミネラルも意識して食べることが必要です。一言でいえば、疲労回復のためには、いわゆる栄養バランスのよい食事をとることが大事なのです。

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