フェモラータオオモモブトハムシの成虫 LiCheng Shih, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

(昆虫料理研究家:内山 昭一)

カシューナッツのような見た目と甘い匂い

 ここ最近になって昆虫食界隈でにわかに注目度が急上昇している昆虫がいます。それはフェモラータオオモモブトハムシ(以後フェモラータと表記)という外来生物です。食用となる幼虫は小さくて丸まっていてとてもかわいく、まるでカシューナッツに色も形もそっくりです。注目される理由としては、見た目で虫には見えないこともありますが、なによりもその甘い匂いに驚かされるのです。ゆでて数日冷蔵庫で保存するとその匂いが際立ちます。「杏仁そっくり」と誰が言ったかわかりませんが、今ではフェモラータの匂いの形容として定着しています。

 フェモラータは2009年に三重で発見されたハムシ科の昆虫で、成虫は翅が金色に光る構造色できれいなため、ペットショップで売られていたものが放置され、野生化したと言われています。太く立派な後脚が特徴で、学名のフェモラータは「太もも」という意味です。フェモラータはクズの葉を食べて茎に産卵し、蔓に虫こぶ(ゴール)を作って越冬します。私はその美味しさに魅了されて、昨年と今年、「食べて駆除する」目的で採集に行ってきました。

クズの蔓の虫こぶ

 フェモラータは愛知でも発見されていて、地元の研究者と落ち合って、昨年と同じ河川敷で採集を始めました。虫こぶは部分的に膨らんでいるので見つけやすく、1か所で見つかると次々と見つかります。2時間ほどでかなりの数の虫こぶを採集できました。虫こぶを開いて茶色の繭を取り出し、繭を割るとカシューナッツならぬフェモラータ幼虫が現われます。一連の作業は慎重にしないと幼虫を傷つけてしまうので注意が必要です。

 フェモラータ幼虫は見た目に優しく甘い香りがするので、スイーツなどのトッピングなどにもよく使います。たとえばゆでてハチミツをからめ、ホイップを絞ったマフィンにのせたりします。

 クズはマメ科なのでフェモラータの大豆への侵入が危惧されています。いまのところ農作物への被害は報告されておらず、クズの繁茂する一部の河川敷に留まっています。ただ今後の推移によっては特定外来生物に指定される可能性があり、その場合は現場で殺処分しなければなりません。そうあってほしくないのですが、推移を見守るしかないでしょう。