トノサマバッタ 写真/アフロ

(昆虫料理研究家:内山 昭一)

長野に生まれ育ち、幼少より昆虫食に親しんだという内山昭一氏。以来、昆虫の味や食感、栄養をはじめ、あらゆる角度から食材としての可能性を追究し、昆虫食の普及・啓蒙に日々努めている。昆虫食への熱い思いの原点はなんだったのか。(JBpress)

話題のChatGPTに聞いてみた

「昆虫食は、昆虫を食材として利用することを指します。昆虫食は、世界中の多くの文化で長い歴史があり、栄養価が高く、環境にも優しいとされています。

 昆虫は、タンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルなど、人間が必要とする栄養素を豊富に含んでいます。また、昆虫は育成に必要なエネルギーが少なく、肥料や飼料などの資源をあまり必要としないため、環境にも負荷をかけずに育てることができます。

 昆虫食は、現代の問題である食糧不足や環境問題に対する解決策として注目されており、世界中で昆虫を食材として利用する食品が開発されています。しかし、昆虫を食べることに対する文化的な抵抗感があるため、普及にはまだ課題が残されています。」

 これは「昆虫食とは何か?」をChatGPTに聞いてみたら返ってきた答えです。やっぱりすごいというか、まさに模範解答ですね(笑)。

昆虫食への“嫌悪感”の壁

 カナダの友人が初めて梅干を食べて思わず吐き出し「こんなものは食べ物ではない!」と言ったと、食品・栄養化学が専門の伏木亨は『人間は脳で食べている』で書いています。

 人間を含め雑食動物にはこれまで食べたことのない物の摂取を避ける《食物新奇性恐怖》がある一方で、好奇心からちょっと齧ってみようと思う《食物新奇性嗜好》という相矛盾する心理があります。

「見た目ちょっとおいしそうだけど、もしかして毒があったら」と思って食べない食物新奇性恐怖の人が多数で、食物新奇性嗜好の人は少数です。

 同じ雑食性のネズミでも、飼育用の餌しか食べていないネズミにチーズを与えても、怖がって後ずさりするという実験結果があります。昆虫食にも同じことがいえます。ホットペッパーグルメ外食総研調べによると、「避ける」88.77%とあり、10人中9人が《食物新奇性恐怖》を感じているようです。

 昆虫を食べられない人から理由を聞くと「姿・形グロテスク」「理屈抜きで拒否する」「餓死しても食べたくない」がもっとも多く、“嫌悪感”が心理的な大きな壁になっていることがわかります。「不味食物群」「危険食物群」「不適切食物群」の3つを併せ持つ食物群を「嫌悪食物群」といい、前回取り上げたコオロギなど、昆虫がまさに「嫌悪食物群」に該当します。