取材・文=岡本ジュン 撮影=シラタニ タカシ

ほどよくシンプルで居心地がいい空間

ゆったり、のんびり旅をするなら、琵琶湖疎水を眺めるカフェで

 オテル・リッツ・パリなど、名だたるパリのホテルやレストランでパティシエとして働いた寺田星羅さんが、京都にカフェを開いたのは1年半ほど前のこと。場所は琵琶湖疎水に沿って走る冷泉通り。地元の人が往来する静かな通りで、春は桜並木がきれいな場所だ。カフェの広いテラスは通りに向かって開かれ、開放的な空間が心地いい。

丁寧な作業から美しいお菓子を作り上げる寺田さん

 パリ帰りのパティシエが、なぜカジュアルなカフェを開いたのだろう。そう思って聞いてみると、「パリでカフェが大好きになってしまったんです。昼間からお酒が飲めて、美味しいものもいろいろあって、友達とおしゃべりしながらゆっくり過ごす時間が楽しくて。ああいう場所を作りたなと思っていました」と寺田さん。

 彼女はとても朗らかで、ハッピーなオーラをまとっている。カフェのシンプルなインテリアの中で、彼女がキビキビと動くとなんだか店全体が生き生きとしてくるようだ。

モダンな中に木を生かしたインテリアが寛ぎ感を醸し出す

 寺田さんがパリに行ったのは大学4年生のとき。気軽なワーキングホリデーのつもりが、すっかりパリが気に入って、ここで働こうと決めたのだとか。もともと食べることが大好きだったこともあり、ワイナリー、オリーブオイル農家、チーズ農家、ベーカリーと興味の赴くままに食にまつわる経験を積み、最終的にパティシエへの道を歩き始めた。

店内で食べるカヌレはホイップと繊細なチュイール添えで500円。京都産のハーブティー650円。

「特に昔からお菓子づくりが好きだったわけではなかったんです。でもやってみたら楽し過ぎて……」とその道を突き進んだ。パリの製菓学校を首席で卒業した寺田さんが選んだのは、厳しいことで知られる名のあるパティシエの下。

「昔かたぎのパティシエで、それはパリでも有名でした」と笑う。

 もちろん仕事はハードではあったが、様々な試練をこなしていくのがとにかく楽しかったそうで、メキメキと腕をあげていったのだ。

オレンジとパッションフルーツ入りの「柑橘アールグレイソーダ」650円