取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛

レトロなモザイクタイルのカウンターがかわいい

シンプルで滋味深い、初めて出会う韓国の味

 賑やかな四条寺町にも近い、高辻通と寺町通りの交差点付近にあるレトロな民家が『ハハハ』。口にすると陽気な気分になる名前は、日本と同じく、韓国でも笑い声だという。昼から通しで営業する食堂気分の韓国料理店は、昼飲みにもいい隠れ家だ。

洋風の古民家に韓国文字の小さな看板が目印

 店が立つのは飲食店も少なくない場所だが、通学の学生や買い物途中の住民も行き来する“街”感もあるエリアだ。明るい色の洋館風のタイル張り、入口の瓦屋根が印象的な古民家の店舗は、よく見なければ飲食店と気づかないほど街に溶け込んでいる。

「歴史があるというか、経年劣化したような、今は作れないものが好きなんです。この建物の壁を見た時にすごくいいなぁと思って、そのまま残しています。作ったのは床ぐらいかな」と笑うのは店主の全敞一さんだ。

店奥の古いガラス戸もいい雰囲気を醸し出している

 確かに、廃墟のような経年具合が景色となっている壁の迫力たるや! 器のように、建物も時間が育てた景色というものがあるのだ、とこの店に踏み込むと実感できる。置かれた古い椅子やテーブル、フランスのアンティークのランプがふんわりと照らす光りなど、すべてが符合してとても安らかな気に満ちている。

2階の空間はカフェのようにゆったりとしたテーブル席もあり

「日本には食堂でお酒を飲むというスタイルがあるじゃないですか。さあ飲むぞっていう居酒屋とは違って、ゆるっと飲めるというか、ノーガードでお酒が飲めるというか(笑)。そういう韓国料理があったら面白いかなという発想から生まれた店です」と全さん。実は、『ピニョ食堂』など、京都でセンスのいい店を何軒もてがけている飲食の達人だ。

韓国の古い店のイメージから作ったというモザイクカウンター