取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛

からりと揚がった熱々の海老フライがメインディッシュ

京都の住宅街に誕生した、海老フライの名店

 海老フライって、不思議とテンションが上がる食べ物ですよね(昭和世代だけでしょうか?) 。今回はそんな海老フライが大好きな料理人さんのお店です。

「いまから なかじん」は京都御所の北西、静かな住宅街にある料理店。和洋折衷、ジャンルにこだわらず美味しいものを集めたコースが3種類あり、メインは海老フライ。営業は昼のみ、6席、要予約でコースだけとややハードルは高いが、大人になるとこんな店の方が実は居心地が良かったりする。大人4人以上で貸し切り可能なので、気のおけない仲間や家族でゆっくり楽しむのもよさそうだ。

 料理はどれも、「あぁ、おいしそう」と素直に思える安心なビジュアル。でもひとつひとつの食材や調味料を磨きぬき、ひと手間加えている。だから口に入れるとハッとさせられるのだ。

オープンキッチンのカウンターだけという肩の力が抜けた雰囲気もいい

 店主の中村さんは飛騨高山の出身。京都へ来て30年がたち、独立してから5軒目となる店を3年前に立ち上げたところだ。蕎麦からはじまり、天ぷら割烹などを経てここに行き着いたというが、そのストーリーは後程ご紹介することとして、まずは現在のお話を。

「オープンしたのはちょうどコロナ禍のまっさい中でした。以前の場所の老朽化に伴い、移転を決意したんです」と中村さん。

「嫌いなものはまずもの」と言い切る、美味しいもの好きの料理人・中村一臣さん

 最初は都心にあった前の店に近いエリアを探したそうだが、どうにもほどよい物件が出てこない。困り果てていた時に、店のお客様から声がかかり、この場所へと導かれたという。

 駅でいうと今出川、同志社大学のすぐそばで静かな環境、今までとはうって変わって飲食店もまばらなエリアである。しかし、駅を出て1分というアクセスの良さと道路からすこし奥に引き込んだアプローチのある建物の造りが気にいってここに決めた。

おちゃめな海老フライバッチがきらりと光る

「僕は海老フライが大好きなんです。ですから人生最後には海老フライを出す店をやりたいとずっと考えてきました。この店をオープンするときには、ここが最後の店になるかもなぁという思いがあり、海老フライを出す店をやるなら今だろうということになったんです」。

 おりしもコロナ禍である。周辺は高級住宅街とあって、歩いて食べに来られる店はありがたい、と口の肥えたお客さんが次々とやってきた。和洋折衷の肩ひじ張らない料理も功を奏したようで、自然と新しい店のファンが増えていったという。