蕎麦から天ぷらへ、そしてフライへ。目指すは研ぎ澄ました料理
さて、ではそろそろ中村さんの料理人としての足跡を振り返ってみよう。店主の中村一臣さんは、かつて蕎麦職人であり、全国から蕎麦好きが食べにやってくる名店を営んでいた。塩で味わうそばを出すのも、当時としては新しく印象的であったし、豆腐を塩とオリーブオイルで出していたのも有名。当時としては目から鱗の料理を次々と披露し、京都のみならず、全国のおいしいもの好きの注目を集めていた。
ところが、である。突然のそばアレルギーにより、蕎麦が打てなくなってしまったのだ。そこで、天ぷらをメインにした割烹料理へと転身する。この時、蕎麦への情熱が冷めやらず、蕎麦粉を使わない、蕎麦のような麺『麦切り』を生み出すこととなる。しかし、あろうことか小麦全粒粉のアレルギーも発症してしまうというアクシデントがまたしても起こり、新たに「ざる中華そば」を開発したという。やがて今の場所に移転したのを機に、海老フライの名店を目指すこととなった。
最後に中村さんは「海老のアレルギーにもなってしまって」とポツリ。これには驚いたが、なぜか養殖の海老はダメで、天然物は大丈夫なのだそうだ。
というわけで、海老フライの海老は天然もの100%。
「まだまだ日々進化中です」という、波乱万象、ハラハラドキドキの中村さんの料理人生はただいま第3ラウンド。この先どのような料理や店のスタイルへと進化するのか。それはまたこれからのお楽しみとしたい。