「大人のかっぱえびせん」
中村さんの海老フライは、ビジュアルからして特徴的だ。大きな海老の横に、からりと揚がった海老の脚が添えられているのだ。これ、天ぷらではよく見かける光景だがフライで見たのは初めてだった。天ぷらと違うのは、サクサクのパン粉がついていること。
「大人のかっぱえびせん、なんて言われてますよ」と中村さんはにやりと笑った。
嚙むとカリッと軽やかに脚がはじけ、鼻の奥からぶわっと香ばしさが付き抜ける。まさにかっぱえびせんの極上バージョン!
主役の海老フライも想像通りに旨い。パン粉は、理想の食感を出すために自家製。少し寝かせたパンをその日におろして使っている。海老は天然の車海老。むっちりとした海老の身はまるで蒸されたようにしっとりと強い甘みを放つ。それを追いかけるようにサクサクの衣の香ばしさがやってくる。
添えられているのは、塩、あっさりしたタルタル、なかじんオリジナルのソース。人参の香りも鮮やかなキャロットラペとみずみずしいキャベツのせん切り。
まずはそのまま一口、何もつけずにかぶり付いた。もうすでに旨い。さらに塩、タルタル、ソースと試してみると、それぞれに細かな味わいの違いがあり、良さがあり、そんなことを考えながら食べているとあっと言う間に海老フライが消えていた。
続いて、中村さん渾身の麺をご紹介しよう。まるでそばのような端正な姿の中華そばだ。ざるそばスタイルで食べる中華麺はまるで蕎麦のようなしなやかな食感に、小麦の甘い香りと弾力も兼ね備え、そばともうどんとも違っている。
2種類のオリジナルの塩は、ひとつは煮詰めた鶏がらスープと合わせた、中村さん曰く“塩ラーメン”の味。もうひとつはしょうゆをベースにした“しょうゆラーメン”の味。むむむ、これまたどちらも味わい深い。蕎麦屋時代に苦心して作り上げたそばつゆも添えられ、途中でラー油をかけて味変するのもおすすめという。
研究熱心で、サービス精神も旺盛、規制概念にとらわれず美味しいものを切り開いていくアイデアに優れている。そんな中村さんらしさが全開に現れた麺なのだ。