平安時代に成立した「やまと絵」の歴史をひも解き、名品を紹介する「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美」展が東京国立博物館でスタート。“日本美術の教科書”というキャッチフレーズ通り、壮大かつ豪華な内容だ。
文=川岸 徹 撮影=JBpress autograph編集部
平安王朝の美を受け継ぐ
開催前から「出品作が豪華過ぎる」と話題を集めていた東京国立博物館「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美」展がついに開幕した。展覧会の出来栄えは、期待値をはるかに上回るクオリティ。次々に現れるやまと絵の名品を前に、「これは正直、凄過ぎるだろ」と圧倒されてしまった。
どこがどういうふうに凄いのか。例えば、国宝《鳥獣戯画》や国宝《源氏物語絵巻》はそれだけで展覧会が成り立ってしまうほどの日本美術史を代表する名品。それが今回は一展示品としてごく普通に紹介されている。展示品すべてが豪華過ぎて、いつもは出会えた興奮でドキドキしてしまう国宝《鳥獣戯画》も、ある意味冷静に鑑賞できた。
さて、今回の展覧会のテーマである「やまと絵」とはいったい何か? やまと絵が成立したのは平安時代前期。中国の風景や風俗を描いた「唐絵」と区別するために、日本を舞台にした作品を「やまと絵」と呼ぶようになった。だが、やまと絵は時代の流れとともに変化。唐絵や漢画といった外来美術の理念や技法の影響も受けながら独自の発展を遂げ、四季の移ろいや月ごとの行事、花鳥、山水、様々な物語など、バリエーション豊かなテーマで作品が描かれるようになった。
つまり、やまと絵とは“平安王朝の美”を受け継ぎながらも、常に革新的であり続けた日本ならではの美術。現在では、日本的な主題や画風をもった絵画を意味する包括的な概念として使用されている。
そんなやまと絵を、平安時代から室町時代までの優品に絞って紹介するのが「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美」展。展示総数約240件のうち、国宝53件、重要文化財は111件を数える。教科書でもおなじみの“あの作品”が目白押しで、日本美術の神髄を知るにふさわしい内容といえる。