名品が集結する「揃い踏み」に注目

「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美」展示風景。国宝《信貴山縁起絵巻》飛鳥巻(部分) 平安時代 12世紀 奈良・朝護孫子寺

 展覧会すべてが見どころであり、作品ごとの甲乙は付けがたい。それでも美術ファンならドキリとしてしまう話題は多い。まずは「四大絵巻、揃い踏み」。平安時代末に制作された4つの絵巻、国宝《源氏物語絵巻》、国宝《信貴山縁起絵巻》、国宝《伴大納言絵巻》、国宝《鳥獣戯画》は絵巻作品の最高傑作として知られ、通称“四大絵巻”と呼ばれている。この四大絵巻が30年ぶりに集結するのだ(※《伴大納言絵巻》は10月22日で展示終了)。

 それぞれ熱狂的なファンをもつ絵巻だが、個人的には《信貴山縁起絵巻》が一押し。鉢が空を飛び、米俵が舞い上がり、剣を持った童子が大空を駆けめぐる。画面いっぱいに展開される奇想天外なストーリーがたまらなく好き。画中に描かれた人々の表情も生き生きとしていて、幸せな気分になりたいならこの絵巻作品だ。

「揃い踏み」は四大絵巻だけではない。10月24日~11月5日には国宝《伝源頼朝像》、国宝《伝平重盛像》、国宝《伝藤原光能像》の、いわゆる「神護寺三像」が揃い踏み。いずれも横幅1mを超す一枚絹に描かれたほぼ等身大の人物像。威厳に満ちた姿をじっくりと見比べたい。

 11月7日~12月3日には国宝《久能寺経》、国宝《平家納経》、国宝《慈光寺経》が集結する。装飾経は平安の貴族たちが仏のご利益を求めて、経巻に煌びやかな装飾を施して作り上げたもの。特に《平家納経》は平家一門がその繁栄を願って厳島神社に奉納した経巻で、ため息が出るほど美しい。経の大意を描いた華やかな見返し絵、表裏ともに金銀の箔をまいた料紙、野毛やあし手を散らした意匠。平安時代の貴族は美意識とこだわりがものすごい。