取材・文=岡本ジュン 撮影=シラタニ タカシ
京都の日常に溶け込むように、ふらりと訪れられる場所
四条河原町近くの路地をクネクネと入ると、民家を改装した建物に小さな店が数軒集まっていた。そこに飲める本屋がある。名前は『レボリューションブックス』。本を買いに来る人もいれば、飲むためだけに来る人もいる、自由きままな気風が漂う立ち飲みである。
店主・西谷将嗣さんは、元ミュージシャン。パンクバンドのドラマーだったという。ひょうひょうとした人柄で、さっぱりした接客も自由な空気感に一役かっているようだ。
壁に掲げられた黒板にはとてもそそられるつまみがずらり。その日のメニューを眺めているだけでシアワセな気分になれる。
この日のメニューを見てみると、お造り、ししとうの煎りつけ、あんかけ豆腐、鳥肝煮、小芋のから揚げなど20種類以上。和食ベースでシンプル、どれもどことなく老舗酒場を思い起こさせるような品書きが並んでいる。しかし、目の前に登場すると想像の斜め上をいくつまみも多いのだ。
そのまま出すのではなく、ひと手間かけたり、サプライズなアレンジをほどこしたり、ちゃんとこの店の料理として存在感を放っている。だからまた食べたくなるのだろう。例えば『ピータンチーズ』もその一つ。クリームチーズとピータンを一体化したなかなかの酒泥棒である。これがあるとうれしくてついつい飲み過ぎてしまった。
つまみはどういう周期で回っているのかな?と思って聞いてみると、西谷さんがチャートノートを見せてくれた。そこには今まで作ったつまみがすべて書き込まれ、ひとつ終わると次を作るというローテーションができるようになっているのだ。なんとも合理的である。
日本酒もあるが、ビール、焼酎、割ものまでいろいろ揃っている。京都伏見の酒蔵・松本酒造の日本酒は定番だそうで、面白いところではキンミヤ焼酎で有名な宮崎本店が作る日本酒も置いている。さりげないようで、西谷さんらしい目線がちゃんと注がれている。