酒場と本屋のユニークな組み合わせはどこから?
飲み屋と本屋がドッキングしたユニークな店舗なので、「どうしてこの仕事を?」と聞いてみると、意外な答えが返ってきた。好きが高じてではなくて、何か店をやろうという段になって、改めて考えて決めたことなのだという。
「仕事をするにあたって、自分の中に蓄積されているものから選んだというか……。飲食業、書店は選択肢にありましたが、とくにそこは決めつけずいくつか考えていました。食に対しては昔から興味があったし、またバンドのツアーで日本全国を回った時に、飲み歩いたりもしました」
なるほど。そこで“食”がテーマになったのですね。
「やったことないものを、興味があるだけではできないでしょう。自分の中で情報量が多いというか、自分で良いか、悪いかの判断基準があってジャッジできることが必要でした」
そうしてでき上ったのがこの店というわけだ。
幅広い食の本がずらりと並ぶ。その背表紙を眺めるだけでも楽しい時間
店の造りは、手前がカウンターのある立ち飲み、奥は本がメインに置かれたフロアになっている。手前の立ち飲みエリアにも本棚があり、本を平置きして飾る棚も蓋をすればテーブルに早変わりという工夫がなされている。
本についても少しご紹介しよう。
“食”がテーマといってもジャンルは幅広い。絵本があったり、文学や小説があったり、ルポや食文化に関する本など。そのセレクトを聞いてみると、基本的に選ばないと決めているジャンルが2つあるのだそうだ。ひとつはレシピ本で、手早く簡単に調理するための本など。もうひとつは健康に関するもので、これを食べれば体にいいというような感じの本。それ以外は自分がいいなと思ったものを選ぶ。
基本、酒飲みは食べることが好きだ。だから食がテーマの本を眺めるのもいい酒のつまみになる。カウンター脇にある本棚は、本日のおすすめ本が並ぶ。そこを眺めながら、つまみに何を頼むかの構想を練るのもよさそうだ。
つまみは小皿なので一人でもいろいろ頼めるし、小腹がすいた時間のいわゆる京都でいう“むしやしない”にもちょうどいい。立ち飲みだからサクッと寄るにもぴったり。本棚を眺めたり、なんなら買って読んでもいいと退屈もしない。第一、中心地に近い場所というのが便利。旅の隙間時間を過ごす最適な避難場所になってくれそうだ。