中国の習近平国家主席は香港での言論統制を強めている(写真:AP/アフロ)
  • 3月19日、香港で国家安全条例が可決された。これにより中国政府による言論統制が徹底的に強化される。
  • メディアや学術論文、SNSでの発言などが反乱の煽動や国家機密の漏洩といった罪に問われ、極めて重い刑罰を科せられる可能性がある。
  • 米国など西側諸国は批判を強めており、香港に対する制裁強化につながれば、中国と世界経済の分断が決定的になるかもしれない。(JBpress)

(福島香織:ジャーナリスト)

 ついに香港で国家安全条例が可決されてしまった。この条例がどれほど香港と国際社会にとって悪影響をもたらすものかを改めて考えたい。

 香港立法会は19日、基本法23条に基づく国家安全条例を全会一致の89票賛成で可決した。23日、李家超行政長官の署名によって発効する。

 これは2020年6月に全人代によって可決された香港版国家安全法(香港国安法)に続く、香港の国家安全、治安維持を目的とした法律だ。香港国安法は中国の全人代という“エセ”立法機関が一方的に可決し、香港立法会はノータッチだった。

香港立法会は全会一致で国家安全条例を可決(写真:新華社/アフロ)

 この香港国安法で、香港基本法第23条に基づき制定される国家安全条例(治安維持条例)を速やかに制定することが香港に要求されていた。今回、この香港国安法と基本法23条に基づき、香港立法会が条例を可決し、香港の立法手続きを経た条例が施行される。これにより、香港の国家安全・治安維持法体系が完成したことになる。

 香港政府広報によれば、今年1月25日に、香港立法会が行政長官との相互交流質問会で基本法23条に基づく立法任務を開始することを決定。立法会の諮問を受けたのち、草案が作成され、1月30日から2月28日までパブリックコメントが募集された。1万3000のコメントが寄せられたが、98.6%が支持を表明したという。

 3月8日から三読と呼ばれる三度の全体審議を経て可決された。李家超行政長官の「一日も早く」という要請を受けて審議期間はわずか13日。香港の人々の暮しを大きく変える重要な法律であるのに異例のスピード可決といえる。