3月15日放送のTBS『不適切にもほどがある!』(金曜午後10時)の第8回はテレビ史上に残るドラマだったと言っていい。これほどまでに世間を辛辣に批判したドラマは平成期以降、なかった。
脚本を書いているクドカンこと宮藤官九郎氏(53)がコミカルでハートフルな作風を得意にするばかりでなく、鋭い批評眼も持つことがあらためて知らしめられた。
テレビドラマがすりよりがちな「世間」に諫言
政治や権力を批判するドラマは割と多い。タブーに挑戦しているように見えるが、政治や権力には批判が付き物であり、さほど野心的なことではない。しかも、元ホワイトハウス広報官が大統領らの醜聞隠しに奔走する『スキャンダル 託された秘密』(ABC、2012年)などの米国ドラマに比べたら、日本のドラマはリアリティーもインパクトもおよばない。
ドラマにとって政治や権力より批判しづらいのは世間なのだ。視聴者と重なり合うのだから。返り討ちに遭う恐れも強い。それなのにこのドラマの第8回は世間を真っ向から批判した。