上司も表面上は笑顔で部下の話を聞くように努めているかもしれないが…(写真:maruco/イメージマート)

話したことが伝わっていない——。こんな思いをすることが往々にしてある。会社やビジネス上のやりとりで誤解があると、自身の評価や成績にも影響しかねない。伝わりやすい話し方はどのようなものなのか。テレビ東京ワールドビジネスサテライトの解説キャスターが、実体験を基に対話形式で「伝わる話し方」のコツを公開する(全3回の3回目)。

(*)本稿は『「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう』(山川龍雄著、日経BP)の一部を抜粋・再編集したものです。

山川龍雄・テレビ東京解説キャスター(以下、山川):特に仕事の現場、とりわけ上司への説明はこのことを心がけてください。まず結論から入る。そして話し始める前に最終的な目的を伝える。

 つまり、上司に「報告」しようとしているのか、「承諾」を得ようとしているのか、「アドバイス」を受けようとしているのか。それを伝えてから、各論の説明に入ってください。

——そうしないと、上司も要領を得ない話にいつまで付き合っていいのか分からないわけですね。

山川:はい、そしてイライラが募っていきます。場合によっては「それで、何が言いたいの?」とか「結論から言ってくれ」といった一言を浴びせます。

 最近は職場のパワハラが問題になっているので、上司も表面上は笑顔で部下の話を聞くように努めているかもしれませんが、本心では苛立っているはずです。だいたい出世している人はみんなせっかちですから。

山川 龍雄(やまかわ・たつお)氏 テレビ東京解説委員
1965年10月熊本県荒尾市生まれ。89年京都大学経済学部卒業後、花王を経て、91年日経BP入社。物流雑誌「日経ロジスティクス」の編集に携わった後、95年「日経ビジネス」に異動。自動車、商社業界などを担当後、2004年~ 08年までニューヨーク支局長を務める。日経ビジネス副編集長、日本経済新聞証券部次長を経て、11年4月から日経ビジネス編集長。 14年4月からテレビの報道番組に仕事の軸足を移し、現在に至る。

——それはなぜ?

山川:企業経営というのは、ある意味、合理性を追求するゲームです。ムダを削って、利益を捻出しなければなりません。だから、よくできる経営者や管理職ほど、時間をムダに使いたくないという意識が強い。

——部下の立場になれば、話を小出しにして、「今日は機嫌がいいのかな」と顔色をうかがいながら、話を進めたいというのも本音としてはあります。いきなり直球を投げて、ノックアウトされたくない。

山川:ああ、なるほど、最初は変化球を投げて様子を見る。それは上司の性格や、上司との相性にもよりますが、高等テクニックかもしれません。ただ、いつもそんな態度だと、おそらく上司は心の中では「頼りない部下だな」というレッテルを貼っているでしょう。

 どんな上司に対しても基本は、ダラダラと話すのは避けた方がいい。上司に説明する際に、よく「で?」と先を促される人は、注意した方がいいでしょう。

——そう考えると、長い社会人生活、話を結論から始められる人と、そうでない人とでは、ずいぶん差がつくように思えてきました。とはいえ、すぐに実践できるものではありません。何か訓練法のようなものはありますか。