- 「選挙イヤー」と呼ばれる今年、アジアで注目されているインドネシアの大統領選挙が2月14日に実施される。
- 過去10年にわたりインドネシアの発展を牽引し、圧倒的な支持を得ているジョコ大統領が退任。その椅子を狙い三つ巴(どもえ)の戦いが繰り広げられている。
- 多民族・多宗教の新興国における民主主義化のモデルともされてきたが、権力闘争が激化する気配もみられ、インドネシアの今後の発展を左右する分水嶺になるかもしれない。(JBpress)
(宇田真:フリーコンサルタント)
「世界最大の直接選挙」といわれるインドネシアの大統領選挙が、2月14日の投票日に向け大詰めを迎えようとしている。
インドネシアは世界最大のイスラム教国家でありながら、他の宗教にも寛容な民主主義国家でもある稀有な存在だ。親日国家の1つで多くの日本企業が進出しているほか、日本を含む東アジア諸国にとって資源輸入の生命線であるマラッカ海峡を押さえる地政学的にも重要な国になっている。こうした背景もあり、今回の大統領選は日本でも注目されている。
まずは、3人の候補者の政策の違いから見ていこう。
背景として理解すべきは、現職のジョコ・ウィドド大統領の人気の高さだ。過去10年のインドネシアの経済発展は、ジョコ大統領のリーダーシップによるところが大きい。汚職まみれだったインドネシアの政財界にメスを入れ、何よりインドネシア初の庶民出身の大統領ということもあって圧倒的な支持を得てきた。支持率は今でも70%台を維持している。
1998年のスハルト政権崩壊後、民主化を進めるにあたり大統領の権限を大幅に削ってきた。その結果、大統領の任期は2期10年までとなった。今回、大統領選が実施されるのはこのルールに抵触するためで、極めて高い支持を得ていながらジョコ大統領自身は立候補できない。
そのため3人の候補者にとって、ジョコ大統領の支持層をどう取り込むかが勝負となる。実際、3人中2人は、ジョコ政権の路線を継承するとしている。その2人がプラボウォ氏とガンジャル氏で、反ジョコ路線を打ち出し反対票を取り込む戦略を打ち出しているのがアニス氏だ。