(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年1月9日付)

トランプ氏がもし大統領になっでも、それは米国自身が持つ民主主義の自浄作用なのかもしれない

「私は米国を信用している」

 ドナルド・トランプが台頭し、凋落し、そして再び台頭してきたこれまでの間、この台詞がずっと筆者の頭にこびりついている。

 遅まきながら気づいたのだが、少し元気になるこの言葉は映画「ゴッドファーザー」の最初の台詞だ。

 実際には米国を信用できなくなってしまい、仕返しを依頼しにマフィアのドン・コルレオーネを訪ねたアメリゴ・ボナセーラの言葉である。

報復誓うトランプはまさにマフィアのドン

 トランプは米国の有権者たちに「自分が諸君のために報復する」と呼びかけている。システムから「ひどい扱いを受け、裏切られた」人々全員に訴えかけている。

 実にドン・コルレオーネ的だ。おまけに、この訴えは成果を上げている。

 2024年の大統領選挙を控えた世論調査で、トランプは全体的に現職のジョー・バイデンをリードしている。

 選挙の勝者を当てるギャンブルを主催する「ブックメーカー」たちも、トランプを本命視している。共和党の予備選挙だけではなく、本選挙でもだ。

 前回の大統領選挙を覆そうとした疑いで裁判に臨んでいる人物を有権者が大統領に選びそうに見える時に、筆者はなぜ米国のことを信じ続けられるのか。

「米国を信用する」という言い方は、2つの異なる意味を取りうる。

 1つ目は、米国が賛成・支持するモノやコトは信用できるという意味。

 2つ目は、米国は最終的にはうまくやると思えるという意味だ。この2つは関連こそしているものの、同じではない。