不変性にある服部ソングの魅力

 このCD収録曲から、戦前の代表曲を発売順に少しだけ列挙すると──

・『霧の十字路』(昭和12年、詞・高橋掬太郎、歌・森山久)※森山久は、森山良子の父です。
・『別れのブルース』(同12年、詞・藤浦洸、歌・淡谷のり子)
・『雨のブルース』(同13年、詞・野川香文、歌・淡谷のり子)
・『一杯のコーヒーから』(同14年、詞・藤浦洸、歌・霧島昇、ミス・コロムビア)
・『湖畔の宿』(同15年、詞・佐藤惣之助、歌・高峰三枝子)
・『蘇州夜曲』(同15年、詞・西条八十、歌・霧島昇、渡辺はま子)
・『私の鶯』(同18年、詞・サトウハチロー、歌・李香蘭=山口淑子)

 戦後、服部は昭和60年代まで曲を提供し続けますが、戦争を挟んだ昭和10年代から昭和20年代までの20年ほどが絶頂期と言っていいでしょう。

 終戦直後の5年間に限っても、私のお気に入りの曲は次のようにすぐに列挙できます。

・『夜のプラットホーム』(同22年、詞・奥野椰子夫、歌・二葉あき子)
・『胸の振り子』(同22年、詞・サトウハチロー、歌・霧島昇)
・『東京ブギウギ』(同23年、詞・鈴木勝、歌・笠置シヅ子)
・『東京の屋根の下』(同23年、詞・佐伯孝夫、歌・灰田勝彦)
・『青い山脈』(同24年、詞・西条八十、歌・藤山一郎、奈良光枝)
・『恋のアマリリス』(同24年、詞・西条八十、歌・二葉あき子)
・『銀座カンカン娘』(同24年、詞・佐伯孝夫、歌・高峰秀子)
・『買物ブギー』(同25年、詞・村雨まさを〈服部の別名〉、歌・笠置シヅ子)

 以上のようなヒット曲は、YouTubeでも聴くことができますから、未聴曲などがあれば、ぜひとも聴いてみてください。

 ジャンル、曲調、リズムは多岐にわたり、服部の曲が時代を超越した不変のパワーを兼ね備えていることに気づかれるでしょう。