9月に摘発された特殊詐欺グループの拠点には、プノンペンにある日本料理店から食事が配送されていた。関係者によると、毎日弁当150個以上が作られ、この拠点のほかにも届けられていたという。

 こうした動向が手掛かりとなり、9月の摘発につながったが、関係者は「今回拘束された人数を差し引いても、プノンペン中心部からデリバリーができる範囲で、さらに100人以上が詐欺に加担している可能性がある」と話す。

監禁・暴行、不審死もあった日本料理店

 この料理店は日本の暴力団と結びつきがあるとされ、以前よりトラブルが取り沙汰されていた。

 関係者は、「2020年にはこの店の料理人が人間関係のトラブルに巻き込まれ、監禁・暴行の被害を受けていた。料理人はその後、隙を見て日本大使館に逃げ込み、日本に帰国できたようだ」と話す。

 さらには、この店の別の料理人も突然死するなど、不可解な事件が起きている。現地在住の邦人からは「入れ墨のある“いかにも”といった日本人が働く店だったので、行くのを避けていた」という声もあがる。事件の摘発後は、店のオーナーが姿を消し、現在は看板が下ろされた状態になっている。

 特殊詐欺グループは、背後に日本の暴力団がいるとみられ、詐欺の収益が暴力団の資金源になっている可能性が高い。

 カンボジア日本人会の小市琢磨会長は「2020年頃からカンボジアに日本の反社が本格的に進出しはじめた。特にコロナ禍では、現地在住の一般の日本人が、街中で反社とみられる男らから脅迫や暴行の被害を受ける事件も散見されるようになった。日本大使館から注意喚起が出てからは、そうしたトラブルは減少している」と話す。

 在カンボジア日本大使館は22年6月、「邦人同士のトラブルに関する注意喚起」を出した。その中で、「最近、当館に対して在留邦人や邦人短期渡航者から、当地において邦人同士の間で経済的被害や身体的被害を伴うトラブルに巻き込まれた旨の相談が寄せられています」と記載。反社による犯行を暗に示唆し、在留邦人に注意を促していた。

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