言い換えれば、ジャニーズ事務所に所属するタレントも、そうやって事務所の庇護の下にずっと守られてきた。いわば、共存関係にある。タレントだけを切り離すこともできない。
「被害者の人権」より「利害関係」を優先していたということではないのか
ジャニー氏の性加害については、1999年に『週刊文春』がこの問題を報じ、ジャニー氏と事務所が文藝春秋を訴えた裁判で、ジャニー氏の性的虐待が認定されている。そこでテレビがこの事実を報じなかったのも、こうした動きが局内にあったことは想像に難くない。
「重大な人権侵害であるという認識を民放を含む多くのメディアが十分に持てなかった」というより、利害関係が優先して被害者の人権を無視した、と言ったほうが正確だ。いや、私腹を肥やすために人権蹂躙を黙認した、と言ったほうがより明解かもしれない。
ジャニーズ事務所のタレントを起用した広告を企業が見直す中、ネスレ日本の社長兼CEO(最高経営責任者)を2010〜20年まで務めた高岡浩三氏が、一度もジャニーズ事務所のタレントをCMに起用しなかったことが話題になっている。ジャニー喜多川氏の性加害について「20年以上前からうわさとして知っていた。だから一度も事務所のタレントを広告に起用しなかった」と、自身のフェイスブックに書き込んでいる。
ただ、元SMAPでジャニーズ事務所を退所した香取慎吾を、看板商品「キットカット」のアンバサダーとして、CMに出演させる決定をしたのも高岡氏だった。ネットメディアのインタビューで、その理由を「香取さんは退所していたので起用を決めました」と述べている。
しかし、その香取慎吾も、彼と同じく「新しい地図」として活動を続ける元SMAPのメンバーも、前述のようにスキャンダル報道から事務所に守られてきた。一蓮托生であったことに変わりはなく、タレントとしてのいまがあるのも事実だ。
ジャニーズ事務所とテレビ局とのズブズブの関係。この問題にはもっと深く切り込む必要がある。また、そうせざるを得ないところに追い込まれていくはずだ。