ジャニーズ事務所の社名変更を求める民放キー局もある一方で、いまでも所属タレントを起用している番組は少なくない。広告契約を見直す大手企業が、国連人権理事会で採択されている「ビジネスと人権に関する指導原則」を重要視しているにもかかわらずだ。これは、企業活動における人権の保護と尊重を促すもので、果たして問題の本質をどこまで理解しているのか、甚だ疑問だ。
そこで、以前にも書いたことだが、私がかつて民法キー局に出入りして働きながら、そこで見たことをあえて再び披露しよう。
「これ、番組でやらないよね」
あれは平日の昼頃のことだった。翌日発売の写真週刊誌の早刷りを手にした男性がやって来て、午後のワイドショーのチーフ・プロデューサーに声をかけた。
「これ、今日の番組でやらないよね」
そう言って、写真週刊誌を広げて見せる。そこには、当時人気絶頂だったジャニーズ事務所のアイドルグループのメンバーたちが、海外旅行をしている姿が写っていた。同伴者の女性には目線が入っている。
チーフ・プロデューサーの態度がいきなり仰々しくなったので、写真週刊誌を手にした人物が“偉い人”であることは側から見ていてもすぐにわかった。
「あ、いや、どうかな……」
しどろもどろにチーフ・プロデューサーは、その日の曜日担当のチーフ・ディレクターを呼んだ。そして、知らないはずはないのに、この話題が今日の放送予定にあるかどうか、わざとらしく尋ねる。