そこで、わたしはついに病院を辞めることを決心しました。いったん辞めると決めると、わたしの青春がつまったその場所が切なく感じられるものです。ぶつぶつと文句を言いながら通った場所で、どれほど多くのことを学んだのか悟りました。
実は、そういう点では病院に借りがある人間です。そこでの12年があるからこそ、ここまで来られたのですから。
そんなふうに感謝を胸にして、思い出のある職場を去りました。簡単な決断ではありませんでしたが、振り返ってみても、あのときほど辞めるのに適したときはなかったように思います。
そのことから、もう一度悟りました。
すべてのことには時があるということを、準備ができればわたしの心が動きはじめるということを……。
「退屈な」時間を恐れないで
人々は現在の職場で時間を浪費しているのではないかとしばしば焦ります。「わたしがすべき仕事はこんなことじゃないのに、もっとまともな所が絶対にあるはず……」と、どうすることもできずに優柔不断な自分を責めて、不安がります。
しかし、役に立たない時間はありません。
あなたの理性は辞めろと言いますが、心のどこかから躊躇する声がずっと聞こえるのなら、まだ周囲の状況が整っていないのではないか、心の準備ができていないのではないか、と見つめなおすべきです。
心の声にもう一度耳を傾けてみるのです。いまあなたがすべきことはなんなのか。答えはあなた自身のなかにあるのですから。
現代人は退屈さを我慢できません。
そのため職場や結婚生活に倦怠感を抱くと、なにか間違ったと一気に不安になります。
しかし、退屈さはわたしたちに与えられた人生の条件のひとつです。ずっと繰り返される仕事に倦怠感を持つのは当たり前のことです。
退屈な時期は、なにもしない時期ではありません。
あなたが退屈しているあいだ、心のなかではむしろ多くの作業が活発におこなわれています。いままで積み上げてきた経験を無意識のうちに分析し統合して消化する作業がおこなわれているのです。
ですから、貴重な時間を浪費していると思って不安になることなく、退屈な時間を恐れずに、その時間を楽しんでください。
退屈な時間がそれほど長くならなければ、いつかわかることでしょう。その時間があったおかげで、いまのあなたがあることを。