(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年9月4日付)

カナダはめったに世界的なニュースにならない。
ニュースになる時は大抵、ジャスティン・ビーバーやセリーヌ・ディオン、ドレイクといったカナダ人エンターテイナーの行動に関連して話題になる。
米カリフォルニア州のそれとほぼ等しい人口約4000万人の国にとっては、セレブに対する悪くないリターンだ。
だが、カナダはポップ、ラップミュージックのコンサート会場では期待を上回るかもしれないが、その莫大なポテンシャルと比較した場合、経済的な国際舞台では期待外れのパフォーマンスを見せている。
実現しなかった「カナダの世紀」
国土面積では、カナダは世界で2番目に大きな国で、世界一長い海岸線を擁する。
両岸を広大な太平洋と大西洋に挟まれ、貿易上の多大な優位性を持ち、すぐ北にはおおむね未開発の北極が位置する。
カナダはエネルギー純輸出国だ。石油の確認埋蔵量は世界第3位で、天然ガスの生産国としては世界第5位の座にある。
だが、グリーンエネルギーへの転換に欠かせない重要鉱物についても大規模な鉱床を誇る。
そして、もちろん、世界最大の経済大国と国境を接している。
どんな指標で見ても、カナダの地理は同国が経済大国になれることを示している。だが、このような観点でカナダについて語る人はまずいない。
購買力平価ベースでは、カナダ経済の規模は世界15位にランキングされ、トルコやイタリア、メキシコといった国の後塵を拝している。