- サッカーで日本代表に敗れ、一つの時代の終わりを予感させたドイツ代表だが、ドイツ経済もスタグフレーションの渦中にあり、極めて深刻な状況にある。
- それに対して、欧州債務危機で経済危機に陥ったギリシャが高成長を謳歌している。地道な構造改革を進めてきた結果だ。
- 金融緩和という痛み止めを打ち続け、構造改革を先送りしてきた日本は30年に及ぶ経済の低迷に沈んでおり、ギリシャとは対照的だ。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ヨーロッパの経済は典型的なスタグフレーションの渦中にあり、その中でもドイツの経済は極めて深刻な状況にある。
欧州連合統計局(ユーロスタット)によれば、ドイツの最新2023年4-6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比横ばいにとどまった。もっとも、その欧州の中でも例外的に景気が好調な国もある。その代表例が南欧の小国、ギリシャである。
ギリシャの2023年4-6月期の実質GDPは前期比1.3%増と、1-3月期(同横ばい)から再加速した。コロナショック前の2019年の実質GDPの水準を100とすれば、直近2023年4-6月期のドイツの実質GDPは100.4にとどまっているが、ギリシャは107.2とコロナショック前を7%以上も上回るなど、良好なパフォーマンスを見せている。
好調な景気を受けて、ギリシャでは公的債務残高の圧縮も進んでいる。
2022年のギリシャの公的債務残高は対GDP比171.3%と、ユーロ圏全体(91.3%)に比べるとまだ大きい。しかしコロナショック前の2019年は180.6%だったことから、ギリシャはこの間、9.3%ポイントの公的債務残高の対GDP比率の圧縮に成功したことになる。
【図表1 ギリシャの公的債務残高(対GDP比率)の推移】
ここで、かつてGIPS(ないしはPIGS)と呼ばれたユーロ圏の重債務国(ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン)の公的債務残高の対GDP比が、コロナショック直前の2019年と2022年の間でどのように変化したかを確認すると、ギリシャの9.3%ポイントの圧縮幅が他の重債務国に比べて、突出して良好なことが分かる(図表2)
【図表2 重債務国の公的債務残高の対GDP比の増減(2019年/2022年)】