引退会見に臨んだ岩渕真奈(右)と、駆け付けた澤穂希(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

涙と笑顔の引退会見

 記憶に残る選手だった。あんな小さな体(公表は156センチであるが、それよりも低いと見える)で外国の体格のいい選手と対等に試合ができるなでしこジャパンの岩淵真奈選手には多くのファンの応援があったものである。

 2011年にドイツで開催されたW杯女子サッカー大会で初優勝を飾ったチームの最年少メンバーの岩渕真奈(30)が引退を発表し、9月8日都内で記者会見に臨んだ。3回のW杯出場を果たし五輪でもメダルを獲得している輝かしい成績を誇る彼女は記者団の前に座るときから目に涙を浮かべていた。

「引退するとSNSで出した時からいろんな人に『ありがとう』と言ってもらえて、自分のサッカー人生が大好きだと思っていたのが、もっと好きになったし、本当に色々な人に応援されていたんだなと。もうただただ、ありがとうございましたっていう気持ちです」

 瞳を潤ませながら挨拶をした岩淵は引退理由が今年のW杯のメンバーに選ばれなかったことは関係なく昨年に両足首の手術などを経て理想とする「仕掛けてゴールに向かう」プレーが出来なくなったことで、なでしこメンバーたちにも引退を相談していたことを明かした。

 彼女が言う通り今回のW杯前の幾つかの試合に途中から出場した彼女の動きは全盛期時代の身体に大きな出力のエンジンを積んでいるような馬力のあるそれではなく、どこか具合が悪いように見えたのも事実であった。であるから筆者は、W杯メンバーに岩渕が落選したのも驚くこともなく、妥当かと思ったのだが、スーパーサブとしてシュートを決めてきた彼女の活躍がなでしこを牽引してきたのも事実なので、一抹の寂しさを感じたものである。