(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

「温暖化は嘘」の言説を信じたい人々

「地球温暖化なんて、信じない」「トランプ大統領はよく言ったよ」「はっきり言って、私はトランプを支持している」

 いまから6年前の8月、訪れた米国中西部イリノイ州の農場主は、そう豪語していた。モンサント社(のちにバイエル社に買収)と契約を結び、遺伝子組み換えのトウモロコシを作付け、最新のスマート農業技術を取り入れた大規模農場を経営していた。

 当時まだホワイトハウスの主だったトランプは、地球温暖化を否定して大統領に選出され、この翌年には地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱に踏み切っている。

 地球温暖化を信じない、という農業経営者は1人だけではなかった。モンサント社の開発した除草剤「ラウンドアップ」を撒いても枯れないという遺伝子組み換え大豆を栽培する農場では、種を蒔く前に畑を耕す必要がない「不耕起栽培」によって(耕すのは雑草の生育を抑え込むため)、土中の二酸化炭素を放出させない、だから地球温暖化に貢献している、という触れ込みでモンサント社に紹介されたが、肝心の経営者がやはり「地球温暖化は信じていない」と言った。地球の長い歴史の中に氷河期があったように、寒暖を繰り返す波長の一部に過ぎない、との主張だった。そのうちに地球は涼しくなる、というトランプの主張とも重なる。

 温暖化傾向に関係なく、年によって収穫量と収入が変動する農業従事者にとっては、地球温暖化の指摘は受け入れがたいもののようだ。