自動車保険制度の根本を揺らがすビッグモーター事件

 さて、今回のビッグモーター社の不正請求は、クルマの修理という舞台において行われました。

 ビッグモーターが過剰に請求した修理代金は、「車両保険」や「対物保険」から保険金が支払われたわけですが、支払い金額や車種等のデータは、上記で説明した通り、損保各社から損保料率機構に送られています。そして、そのデータは、翌年の参考純率を算出するための基礎となります。

 つまり、保険金の支払い額が大きくなればなるほど、その車種における料率クラスはアップし、翌年の保険料が「増額改定」となる可能性は大ということになるのです。もし、数年間にわたって組織的に多額な不正請求が行われていたとすれば、一般ユーザーが支払う保険料に全く影響がなかったとは言い切れないのではないでしょうか。現に、損保ジャパンは「過去3年間」を対象に被害回復をすると明言しています。

 8月4日、損害保険料率算出機構はこの問題についてようやく、「ビッグモーター社の不適切な保険金請求に関する弊機構の対応について」と題し、以下のコメントを発表しています。

<今般、ビッグモーター社(株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス、株式会社ビーエムハナテン)による不適切な保険金請求により、車両修理にかかる保険金が過大に支払われたケースが多数あった旨の報道がなされております。弊機構は今後、ビッグモーター社および保険会社等による調査を通し不適切な請求が判明したケースについては保険会社にそれらの報告を求め、参考純率の算定に反映していきます。なお、この件に関して、対人賠償のみを補償する自賠責保険の基準料率には影響ありません>(損害保険料率算出機構 ニュースリリースページ

 自動車保険制度の根幹を揺るがしかねない今回の不正請求問題。しかし、これはビッグモーター社だけの問題なのでしょうか。損保会社にとっての上顧客である大手ディーラーや整備工場の見積り工賃は、はたして適正なのか? そこに保険契約が絡んだ優遇はないといえるのか。

 また、損保料率機構は、不適切な請求が判明した場合は「参考純率の算定に反映していきます」としていますが、過去に支払った保険料の検証をどこまで行えるのでしょうか……。

 いずれにせよ、無事故で自動車保険をかけ続けているユーザーは、「自身も不利益を被っている契約者の1人かもしれない」という視点で、しっかりと本件を注視していく必要があるでしょう。

(参考)損保ジャパン
【ニュースリリース一覧】ビッグモーター社による不適切な自動車保険金請求への当社対応 (https://www.sompo-japan.co.jp/announce/2023/202308_02/