(英エコノミスト誌 2023年7月15日号)
それでも大統領はかなりの成果を上げた。
リトアニアの首都ビリニュスで7月11~12日に開かれた首脳会議に先立ち、ウクライナとその緊密な友好国――ホスト国のリトアニアや東欧の近隣諸国など――は、ウクライナが戦争終結後にNATO(北大西洋条約機構)に加盟するための明確かつ信頼に足る道のりが示されることを期待していた。
彼らは2008年にルーマニアの首都ブカレストで開かれた首脳会議の亡霊に怯えていた。
その会議は、ウクライナが「将来」加盟すると宣言したものの、いつどのように加盟するかは明示しなかった。
そのため、ウクライナが守られていない状態でロシアを刺激することになり、ウクライナをかえって危険なグレーゾーンに陥れた。
「戦争中にNATO加盟国になれないことは理解している」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先月、こう認めた。「だが、戦後には加盟国になれる確信が私たちには必要だ」と付け加えた。
将来のNATO加盟は約束されたが・・・
ビリニュスに集まった首脳は実際に「ウクライナの将来はNATOにある」ことを確認し、NATOの「加盟行動計画(MAP)」という試練をくぐり抜ける必要もないと述べた。
だが、それでも先々試練はある。
NATOが出したコミュニケには、「同盟国が同意し、かつ条件が満たされた時に、我々はウクライナに加盟への招待状を送れる立場に立つ」という、どう見ても分かりにくい表現が使われた。
(いくつかの加盟国はウクライナの汚職について大きな懸念を抱いている)
ビリニュスでの約束は「ブカレスト・マイナス」だと米ランド研究所のサミュエル・チャラップ氏は評した。