(英エコノミスト誌 2023年6月24日号)
今年の大統領選挙に向けてパトリシア・ブルリッチ氏とハビエル・ミレイ氏が支持率を伸ばしている。
6月24日の土曜日はアルゼンチンでは極めて重要な日だった。
この日はサッカーのスーパースター、リオネル・メッシの36歳の誕生日だ。また、アルゼンチンの選挙の季節が正式に始まる日でもある。
今年後半の大統領選挙で候補者になろうとする政治家が準備体操を始めているが、選挙を取り巻く環境は厳しい。
年率114%に達しているインフレ率は世界で3番目に高い。
基本的な食料やサービスを購入する余裕のない国民の割合は2018年の30%から現在の43%に増えている。
当然ながら、有権者の最大の関心事は経済だ。
そしてそのせいで、国の経済不安に急進的な対策を提案する政治家が支持を集めるようになっている。
ペロン主義の勢力に衰え
今のところ約20人が出馬を正式に表明している。
まず、所属政党の支持を得るための予備選挙が8月13日に行われ、その勝者が10月22日の本選挙第1回投票に進む。
だが、経済問題が深刻なことから、今年は特に先の読めない選挙になっている。
軍人だったフアン・ドミンゴ・ペロンが権力を握った1946年以降、アルゼンチンではその名を冠したポピュリスト運動「ペロン主義」が大半の期間で政権を担ってきた。
だが、その勢力はかつてないほど衰えているように見える。ペロン主義者の候補者に投票すると話す有権者は、今では全体の4分の1を少し超えるにすぎない。
ペロン主義者のアルベルト・フェルナンデス大統領の下でインフレ率は2倍超に跳ね上がった。
資本規制が強化され、米ドルの巨大な闇市場がますます活気づいている(アルゼンチン国民は自国通貨ペソではなく、米ドルで貯蓄をする)。
中央銀行がペソ紙幣をあまりにも多く印刷してきたために、市中に出回る現金の額は3兆8000億ペソとほぼ4倍に膨らんだ。