欧州連合(EU)の欧州議会が先ごろ採択した包括的なAI(人工知能)規制案について、160人以上の企業幹部らが反対を表明する公開書簡に署名した。米ウォール・ストリート・ジャーナルやロイター通信などが報じた。
シーメンス、ハイネケン、ルノーの幹部らが署名
署名したのは、ドイツ総合電機大手シーメンスやオランダのビール大手ハイネケン、フランス自動車大手ルノーなどの幹部ら。EUがまとめようとしているAI規制案について、「企業と資本を大陸から遠ざけるリスクがある」と警告している。
このほか、欧州のスタートアップ企業の幹部らやSNS(交流サイト)を運営する米メタのトップAI研究者も署名したという。「欧州と米国の間で重大な生産性のギャップが生じてしまう」と述べている。
EUでは、執行機関である欧州委員会が2021年にAI規制法案を提出した。しかしその後、「Chat(チャット)GPT」などの生成AIが急速に普及し、対応が急務になっていた。このため、欧州議会は23年6月、生成AIも含めるよう修正した包括的規制案を採択した。今後は欧州議会と加盟国が協議して最終案をまとめる方針で、年内の合意を目指している。
厳格な管理・情報開示義務
AI法と呼ばれるこのEU包括的規制案では、ChatGPTのような一般利用を目的としたAIの提供企業に対して、厳格な管理・情報開示義務を課す。例えば、EU市場で一般提供する前に、潜在的なリスクを評価するよう義務付ける。これには健康、安全、基本的権利、環境、民主主義、法の支配といった項目がある。
生成AIシステムは、コンテンツがAIによって作成されたことを明示するよう求められる。これにより、例えばディープフェイク画像を簡単に見分けられるようにする。さらに、機械学習モデルのトレーニングに使用した著作権データについては、その詳細情報を一般公開する必要がある。