エストニアに防御を学んだウクライナ

 ――具体的にウクライナはハイブリッド戦争に対して、どのような備えをしてきたのでしょうか。
 

廣瀬:2014年以降の主な動きは、英米軍に軍の訓練をしてもらったほか、NATO諸国と連携したサイバー攻撃に対する防御体制の増強です。特に政府主導でIT(情報技術)活用を積極的に進めてきたエストニアとは特に緊密に連携し、サイバー攻撃に備えてきました。
 
 エストニアは2007年にロシアからのDDoSと呼ばれる激しいサイバー攻撃にさらされました。DDoSとは、多数の端末から大量のデータを送りつけてサーバーをダウンさせる攻撃です。こうした経験から、ウクライナに対し、政府・軍の重要情報を米マイクロソフトのデータセンターに移管する進言をするなど、様々な連携をしていました。
 
 2014年当時、ウクライナはロシアからのサイバー攻撃を立て続けに受けてインフラの一部が停止するなど、かなり脆弱な体制でした。エストニアなどと連携することで、約10年で見違えるほど強固な防御体制を築いています。現在の戦争においても、サイバー攻撃に起因する主要インフラの壊滅的な被害は出ていません。
 
 ハイブリッド戦争に対しては、価値観を共有する近隣諸国との連携がいかに重要か、理解しやすいケースだと思います。