簡単にいえば、チャイナウォッチャーから見ると、このG7サミットは、中国に焦点をあてたものだった。日本が中心となってG7を団結させ、対中「デリスキング」(脱リスク)という表現で、対中政策の足並みを揃えさせたという点が最大の意義であったといえる。

 デカップリング(排除)ではなくデリスキングという言葉からわかるのは、一見すると中国への配慮のように見えて、今の中国習近平体制が西側先進国にとってリスクであるという認識でG7が一致しているということだ。

 そして、このG7サミットで、ウクライナ・ゼレンスキー大統領を広島に招き、さらにはコモロやクック諸島、インドネシア、ブラジルまで、グローバルサウスと呼ばれる途上国・新興国首脳を招き、G7の言う「1つの国際ルール」を遵守する国際社会枠組みの存在をアピールし、中国にもその「1つしかない国際ルール」を遵守せよと求めた。

 これは、習近平がかねてから主張している“中国式現代化モデルによる新たな国際秩序の再構築”という目標を否定するものだ。中国は、民主化だけが現代化の道ではなく、G7という限られたメンバーだけの金持ちクラブの創った国際秩序は途上国の利益を代表しない、という考えを広めようとしている。だが、今回のG7サミットはグローバルサウスの代表国も呼び、中国が画策している新しい国際秩序の構築の動きに公然と挑戦した。

米国の「レームダック化」と日本の変化

 中国が怒り心頭なのは、そのお膳立てをしたのが日本ということだ。日本はこれまで比較的中国に配慮してみせ、安全保障上依存している米国に致し方なく追随しているというポーズをとってきた。だが、今回はいかにも日本が主導的に根回しをしたような印象を与えた。

 それは、例えばオバマ元大統領が10分で退場した原爆資料館で、バイデン大統領に40分近く、米国の原爆投下による30万人の民間人虐殺の実態について説明を受けさせた、といったことなどもある。また、自衛隊車両をウクライナに提供するなど、平和憲法下の日本としては、極めて踏み込んだ形で外国の戦争に関与する姿勢もみせた。