ちなみにOSCEは冷戦時代の1970年代に欧州安全保障協力会議(CSCE)として、アメリカを中心とするNATOとロシアを中心とするワルシャワ条約機構の間で兵力削減や信頼醸成を目的として立ち上がったもので、アメリカもロシアもウクライナも加盟している。

 ロシアの言い分はそれだけ聞けばいちいちもっともで、筋が通っていると感じられる。こういう法的、政治的な理論武装を常に心がけているからこそ、ロシアは国際政治の場で堂々と自らの立場を主張することができるのである。

 また、外交の場で出会うロシア人は粗野な無法者というイメージとは正反対の人々である。極めて礼儀正しく、理性的で冷静である。決して声を荒らげて感情的になることはない。失言も少ない。

 その代表格がプーチン大統領である。彼は酒も飲まず、タバコも吸わない(とされている)。国民や国際社会に対して長々と自分の言葉で演説することができ、記者や国民の質問に対しても冷静、的確に答え、切り返す。この人は洗練されていると人々に感じさせる。

 日本で報じられる姿は、切り取られた一部分であったり、一面的であったりして、また違う印象を与えるかもしれないが、彼がロシア史の中でも稀有な政治家であることは疑う余地がないだろう。