債務上限問題で議会に迅速な対応を求めたイエレン財務長官(写真:AP/アフロ)

 金融不安が燻る米国。破綻したファースト・リパブリック・バンクについてはJPモルガン・チェースが引き受ける形で救済したが、同じ状況に追い込まれている中堅銀行は少なくないとみられている。その中で、追い打ちをかけるような事態が進行中だ。米国政府の債務上限問題である。足元の状況をジャーナリストの大崎明子氏が解説する。

(大崎 明子:ジャーナリスト)

 米国のイエレン財務長官は5月1日、「議会が債務上限の引き上げ、ないしは停止を決めなければ、米政府は債務不履行に陥るリスクがある」として、「米国の完全な信頼と信用を守るように」と議会に迅速な対応を求めた。

 米政府の現在の法定債務上限は31.4兆ドル。規定がある以上、これに抵触すると新たな国債発行はできないうえ、利払いや償還もできなくなる可能性がある。長期的にそうした状態が続く可能性は低いが、短期的には市場が混乱しうる。

 これを受けて、バイデン大統領は、5月9日に話し合いを行うため、共和党のケビン・マッカーシー下院議長と民主党・下院院内総務のハキーム・ジェフリーズ議員、上院で多数を握る民主党のチャック・シューマー院内総務、共和党のミッチ・マコネル上院議員に連絡を取ったという。

 米国の政府債務問題は出口が見えない状態に陥っている。

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