Photo credit:Mickael Lefevre

 2019年に起きた、パリにあるノートルダム大聖堂での火災。セーヌ川の橋から様子を見守る大勢の人々。建物の象徴的存在である尖塔が崩落する瞬間の彼らのショッキングな表情が今でも鮮明に思い出される。

『ノートルダム 炎の大聖堂』はあの日、火事が起きなかったかもしれなかったノートルダム大聖堂の一日から始まる。

火災報知機は作動していた

 当時、老朽化が進む大聖堂の改修工事が行われていた。作業する人々の中には禁煙にもかかわらず、平気で喫煙する人もいた。木造の建物の中、作業では火花が飛び散る。おまけに配電盤は老朽化している。いつ火災が起きてもおかしくない状況だったことが、今だからこそ、わかる。

Photo credit:Mickael Lefevre

 膨大な資料調査とインタビューを元に描かれる内容はキャッチコピー通り、「ウソのようだが、すべて実話」。

 監督は『薔薇の名前』(1986)、『愛人 ラマン』(1992)、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)など、数々の名作を手掛けてきたフランスの巨匠ジャン=ジャック・アノー。

 アノー監督は「映画の目的は、大聖堂で大火災が発生した原因を追及することではなく、どのように大聖堂が救出されたのかを描くことにある」と語るが、前半はつい犯人探しに目がいってしまい、気が気でない。