心身の健康だけでなく、社会的にも良好な状態にあることを意味する「ウェルビーイング」。最近では「顧客のウェルビーイングを起点とした商品・サービス開発」への関心も高まっている。この新しい潮流は、日本人のライフスタイルをどのように変えていくのか? またそこからどのような産業やマーケットが生まれていくのか? 消費者目線で社会トレンドをウォッチし続けてきた統合型マーケティング企業、インテグレードのCEO・藤田康人氏が、ウェルビーイングに取り組む実践者たちとの対話を通じて、これからの新しいビジネスを考察する。
今回は、身体にまつわるビッグデータから「幸せ」を定量化し、企業のウェルビーイング向上に向けたサービスを提供する株式会社ハピネスプラネットの矢野和男氏に、事業の世界観や将来性について聞いた。(JBpress)
「三角形のコミュニケーション」とは?
藤田康人氏(以下、敬称略) “人や組織を幸せにする”をテーマに、人の幸せを分析し、組織の良好な人間関係を促進するアプリを展開されていますが、そもそもどうして幸せを分析しようと思ったのですか?
矢野和男氏(以下、敬称略) もともと私は、日立でビッグデータの収集や活用技術の開発を行ってきました。ビッグデータを扱ううちに、「人」というものに正面から向き合っていく取り組みが増えていったんです。
2022年の2月からスタートした弊社のアプリ「Happiness Planet Gym」は、組織における心理的安全性の向上を目的とし、組織のメンバー同士の“応援”によって人同士のつながりを媒介するものです。
開発では、幸せを「見える化」するために、人体に起こるバイオケミカルな反応を数値化し、幸せを客観的に捉える努力をしてきました。幸せな組織とそうでない組織のわかれ道はどこにあるのかという質問を通じて10年ほど調査した結果、人が後ろ向きな気分になるときは、人間関係が強く影響していることがわかりました。
藤田 たしかに、悩みの多くは人間関係に関連する気がします。
矢野 特に着目したのが、コミュニケーションの構造です。たとえば、ある企業のプロジェクトマネージャーであるAさんが、BさんとCさんという2名の部下とそれぞれ話をする機会があったとします。もしBさんとCさんが話をする仲でなければ、「V字型のコミュニケーション」が成立しているといえます。逆にBさんとCさんがコミュニケーションをとっていれば「三角形のコミュニケーション」になります。このV字型と三角形は大きな違いであり、生産性が高く幸せな組織であるかそうでないかを隔てる要因にもなります。