御社のドリンク3000本を、うちのイベントへの協賛として提供してほしい――。飲料メーカーにとって商機にも見えるこんな依頼。だが実は、ここにはあるリスクが潜んでいるのだという。
企業のリスクコンサルティングやサイバーセキュリティ対策を担う「脅威分析研究所」の代表・高野聖玄氏が、うっかりしているとハマってしまう企業の「レピュテーションリスク」について解説する。
(高野聖玄:脅威分析研究所代表)
ある飲料メーカーから寄せられた相談
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題が表ざたになって以降、ある飲料メーカーからこんな相談が寄せられました。「イベント協賛としてドリンク提供の依頼があったが、依頼主を確認したらちょっと怪しげな宗教関連団体だった。取引しても大丈夫だろうか」
これは判断が非常に難しい問題です。まず、怪しい・怪しくないという線引きが不明確です。どこからが怪しいのか、どこまでが怪しくないのか。はっきりとした区別はできません。
メーカーにとっては、新たな販路開拓のチャンスでもあります。商売のことを考えれば、多数の潜在顧客が向こうから舞い込んできたようなものです。
多少怪しげだからと言って、チャンスをみすみす逃してしまうのはもったいない。イベント協賛として新製品を参加者に配布すれば、良いPRの機会になる。企業がそう考えるのはごく自然なことでしょう。
では、商売最優先で、相手団体についてノーチェックで取引を始めていいのか。その答えは否です。何のチェックもせずに付き合いを始めてしまうのは、その後に大きなリスクを抱えることにつながりかねません。
このメーカーはこれまで、怪しい・怪しくないにかかわらず、こういったケースで相手の素性について審査したことがありませんでした。相手団体についてそこまで気にしていない。気にしていないどころか、「ちょっとばかり怪しくても販促のためならいいか」くらいに現場レベルで判断していたそうです。
姿勢を転換したきっかけは、統一教会問題でした。教会の暗部が暴露され、宗教団体全般に対する漠とした不安が広がっている中、宗教関連団体に対するチェックの必要性を、リスク管理部門が改めて感じるようになったと言います。結局、この飲料メーカーは協賛の申し出を断りました。