EUと西バルカン諸国の首脳会議に臨むコソボのヴィヨサ・オスマニ・サドリウ大統領(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 10月28日、欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、EUがエネルギーインフラの整備支援を目的に、西バルカン諸国(EU未加盟のアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビアの6カ国)に対して5億ユーロ(約700億円)を補助すると発表した。

 具体的には、西バルカン諸国のエネルギー供給網やエネルギー効率性の改善、再エネ拡充のための投資に対してEUが補助金を与えるとともに、西バルカン諸国がEUによる液化天然ガス(LNG)の共同調達に加わることを容認する。また、目下、電力需給が特に厳しい北マケドニア政府に対して、8000万ユーロの補助の給付を即時に行う。

 EUの「裏庭」である西バルカン諸国もまた、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機の悪影響を受けている。

 西バルカン諸国における化石燃料の対ロ依存度(総供給量に占めるロシアからの輸入量の割合)を2020年時点で確認すると、アルバニアの石炭もさることながら、北マケドニア、セルビア、ボスニアのガスの依存度の高さが顕著である。

【図 西バルカン諸国の化石燃料の対ロ依存度(2020年)】

(出所)ユーロスタット ※総供給量に占めるロシア産化石燃料の割合

 北マケドニアとセルビア、ボスニアの場合、パイプラインを経由してロシア産の天然ガスを輸入している。EUからの経済・金融制裁に反発するロシアは欧州向けのガス供給を絞りこんでおり、その余波を受けるかたちで西バルカン諸国のロシア産天然ガス輸入量も減少し、各国ともエネルギー不足とエネルギー価格の上昇に直面しているのだ。