(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ロシアの経済は、欧米からの経済・金融制裁が重荷となって悪化している。
最新4〜6月期の実質GDP(国内総生産)は前年比4.1%減と、4四半期ぶりの前年割れに陥った。ロシア経済発展省が発表する月次の実質GDPは、6月の同5.0%減をボトムに、7月が同4.3%減、8月が同4.1%減とマイナス幅を縮小させていたが、プーチン大統領が9月21日、ウクライナでの戦闘における劣勢打開を狙い、ロシア連邦としては初となる部分動員令を出したことで、経済に再び強い負荷がかかっている模様である。
特に消費者マインドが悪化し、個人消費が急減したことが、民間が発表する週次統計から明らかになっている。
例えば、銀行最大手ズベルバンク傘下の調査会社ズベルインデックスが発表する週次の消費支出(非食品)は、部分動員令が出された直後の9月25日週は前年比4.7%減と、その前の週の同1.5%減からマイナス幅が拡大した。ロシアがウクライナに侵攻した直後の4月3日週の実績(同4.2%減)以降で最も大きなマイナス幅である(図)。
【図 家計の消費支出(非食品)】
もちろんプーチン大統領は、部分動員令が消費の悪化につながったことを認めていない。しかし消費が急減した状況に鑑みて、プーチン大統領は10月6日に政府に対して消費刺激策を実施するよう要請した。
ロシア中銀も、10月19日に公表した定例の報告書の中で、ロシアの経済が第3四半期に急失速したという認識を示している。
部分動員令によって徴兵されたロシア人男性は20万人とも30万人ともいわれる。仮に30万人がロシアの労働市場から退出したとして、ロシアの労働市場にどれくらいのインパクトを与えるだろうか。